元衆議院議員(茨城県第6区)[無所属]大泉ひろ子オフィシャルサイト -大泉ひろこの徒然草(つれづれぐさ)-
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日々雑感
[2024/03/28]
身近な未知アフリカ



 アメリカ、ロシアを追いかけて、中国、インドも宇宙開発競争に参加している。日本も技術の国の面目をかけて負けじと、最近のH3ロケット打ち上げ成功や小惑星探査機はやぶさの活躍等、人々に知られるようになった。宇宙産業への投資が2030年には倍増すると言われているが、いかんせん、日本の予算は少なく、民間の参入が限られてもいる。
 宇宙は人類にとって未知の代表だ。しかし、地球上にも未知はたくさんある。南極だって、深海だって未知だらけだ。人間社会に注目すれば、日本にとって最も未知な国々はアフリカではないだろうか。近日、多谷千香子法大名誉教授のアフリカ・マリ共和国のお話を聞く機会を得たが、先生は「日本で、マリ共和国って南米の国ですかと質問された」と苦笑していた。
 筆者もそのたぐいだ。半世紀も前に「マリ共和国の花嫁」なる本を読んで、マリに嫁いだ日本人女性の「珍妙」余りある経験を大声で笑いながら読んだくらいだ。マリ共和国は、戦後、フランスから独立し、民主主義国として存在するものの、リビア内戦をきっかけにイスラミストの流入によって、今、国分裂の危機にあるという。
 筆者の関心は戦況や政治の情勢にあるのではない。社会政策を業として実践してきた筆者は、日本にとって、将来の人材導入をアフリカに求める可能性を探りたい。日本はもちろんのこと、先進国は少子化で人口減少を余儀なくされ、南米や東南アジアなど中進国も少子化現象が始まっている。
 日本が実質的に移民労働力として扱っている技能実習生は年38万人入国しているので、日本は世界4位の移民大国にである。技能実習制度は廃止する方向だが、形を変えて維持しなければ日本は人口減少に耐えられない。この制度ではかつて中国人が入ってきたが、中国本土での経済発展により来なくなった。今は、ベトナムやネパールが多いが、円安の影響で、日本で働くうまみが大幅に減少し、やがてアジアの国々からの人材獲得も難しくなりそうだ。
 そういう状況の中で、アフリカだけがすべての国がたどる人口現象と異なり、人口を増やす一方である。要因には複数婚、一夫多妻制の社会であることが挙げられるが、アフリカは、天然資源とともに人材の宝庫にもなろう。日本は、アフリカの豊かな資源獲得に、欧米や中国の後塵を拝しているが、人的資源の獲得は、いち早く人口減少が始まった国として、着手を遅らせてはならない。
 アフリカは欧州が競って植民地化したが、マリ共和国を含むサヘル地域のように特にフランス植民地圏は低開発国にとどまっている。アングロサクソン系は少なくともインドで鉄道、学校、官僚制度などのインフラ整備を行った例もあるが、アフリカのフランス、南米のスペインなどのラテン系は搾取だけに執心した感がある。現在においても、マリ共和国はフランスの介入失敗で、ますます情勢は悪化していると言う。
 日本は、人口減少という必要性から、植民地時代からの歴史や責任を持つ欧州に対抗して、アフリカになにがしかの貢献ができる時が来た。宇宙よりももっと身近な未知アフリカへの挑戦を促したい。 

[2024/02/19]
政治に絶望しつつも、イノベーションを



 政治とカネでニュースが埋まり、自民党の不支持率が86%に及ぶ(テレビ朝日)事態に至った。そのさなか、JAXAのH3ロケットが打ち上げに成功した。約一年前、打ち上げの失敗を泣きべそをかきながら会見していた責任者の顔がほころんでいた。
 日本の科学や経済政策の遅れが国際的に認識されているときに、H3ロケット打ち上げ成功は快挙である。日本はまだやれる科学の力が残っていることを示してくれたのだ。日本は、近年、とかく遅れや停滞が指摘されてきた。太陽光発電、電気自動車、コロナワクチンの開発、AIの普及などで遅れが目立ち、先進国の顔を失いつつある。
 しかも今の政治のカオスと一人当たりGDP32位(IMF)の経済力の低下は、日本を先進国における悪玉の存在にしている。先ずは、政治の刷新は必須だ。リクルート事件以上の政治の腐敗は、与党自民党ではもたないことが明らかだ。では、誰が政権を担うのか。
 政権交代を軽々しく言えないのは、自民党の体たらくは明らかとしても、それを責めるだけで、野党側にいかなる政治を行っていくかが見えないからである。日本再生のための政策はあるのか。H3ロケットに続いて、日本が技術的に優位にある浮上式風力発電や潮流発電を大々的に取り入れるのか。イノベーションを遮る学究体制を改める気はあるのか。
 無論、それ以上に、国民が十分な生活費を手にし、消費を刺激し、二極化した階層社会の緩和が必要だろう。しかし、それは、イノベーションと同時にやっていかねばならない。決して、イノベーションを後回しにしてはならない。なぜなら、国民の消費意欲とイノベーションは日本再生の両輪だからだ。
 自民党がモラルの欠けた人材だらけであるのに対し、野党は政策を打ち出す能力に欠けるアンチプロフェッショナルの集団だ。筆者は旧民主党に身を置いた経験から、このことは痛感している。
 海洋工学の木下健東大名誉教授は、潮流発電を地域ごとのリーダーの下で実働部隊(共同体)をつくり推進すべきであると提言される。筆者が思うに、プロジェクトに政治家が絡めばまたぞろ利権争いになるだけで、地域のリーダーが金集めから、工学的知見から、全てを統括して行うべきである。木下先生曰く、その共同体は国家のようなゲゼルシャフトではなく、郷土の発展を願うゲマインシャフトの集団であることを目指す。
 もう政治には任せられない。選挙に選んでもらうための「得か損か」だけのメルクマールを持つ政党(ゲゼルシャフト)を否定し、郷土を、そして日本を再生させる意欲に燃えたゲマインシャフトの共同体を新たなイノベーションの担い手として盛り上げていくべきだろう。

[2024/02/03]
シンガポールの底力と日本



 過日、シム チュン・キャット昭和女子大教授のシンガポール教育制度についての講義を聴く機会を得た。東京23区ほどの広さで、人口6百万弱の国が、一人当たりGDP世界5位(23年 日本34位)、国際学力調査で世界一の座を獲得するシンガポールの底力はどこにあるのか、不作の30年を送ってきた日本にとって、大いに興味をそそられる。日本はかつて経済・教育指標において今のシンガポールの地位を占めていたことを考えると、下降原因を探るにも、シンガポールから学ばねばならない。
 シンガポールは、原則公教育の国であり、ナショナルカリキュラムの下で教育が施される。先ず、多民族国家であり、民族言語を教育に取り入れつつも、殆どの教科は英語で行われる。英国支配の国であったから、教師に事欠くことはなかったろう。その上で、義務教育6年を修了すると、大学進学予定コースと職業教育コースに振り分けられ、ドイツの制度が取り入れられている。
 職業教育コースでは中等教育の後、美容師、パテシェ、栄養士、保育士等の資格教育が公教育の下で行われる。大学コースも含め、どのコースも親の所得に応じ、日米などと比較すると授業料が低廉に押さえられている。コースの変更も成績によって可能であり、教育は複線化している。公教育によって、食いっぱくれる若者はいない制度である。
 翻って、日本の教育はどうか。高校はかつての農業、工業、商業などの職業教育が少なくなり、普通科が7割になって、結果的に6割の若者が大学に行く。教育制度は単線化している。そもそもは戦後の米占領政策によって六三三四制が創られ、その結果、旧制高等、帝大時代の教育年限を下回り、高等教育は低迷することになった。同時に、大学の大衆化が進み、偏差値による格差階層社会は結果的にできたものの、エリート教育はほぼなくなったと言える。一番の犠牲は研究力の低下だ。
 その大学は概念教育から脱しきれずキャリア教育に欠け、大衆大学に入るために受験に有利な私立勢の台頭もあって公教育は低迷するばかりである。各地教育委員会ごとの独自性は見られず、文科省の方針をなぞる教育、それはゆとり教育が行われたり廃止されたりのダッチロール政策と付き合っていく姿に表れている。
 シンガポールでは教員の給与レベルは極めて高い。校長は高学歴で高額所得者であり、教員の採用から予算の配分まで任されている。つまり、教育者であると同時に経営者としての質を保たねばならない。日本の文教政策では見られない体制だろう。教職が経済的にも社会的にも高い地位を得る職業であることは、日本でも採り入れるべきだ。
 低学力の子供には、教員の数を増やし、丁寧な教育が行われている。授業料は低く、子供は生まれ落ちたときから経済措置が行われ、塾に行く必要のない徹底した公教育を施しているという。しかし、全てがうまくいくわけではないだろう。両親が英語を十分に使えない家庭の子供は学力が低迷しがちであるし、精神を病む子供もいて、学力を誇るシンガポール教育にとって悩みの種である。
 筆者が20年ほど前、オーストラリア在住中に会ったシンガポール人は、エリート意識がプンプンする人も多かった。日本人は英語が下手で、大学院教育を受けていない場合が多いが、シンガポール人は上からの目線で見てしまう傾向がある。リークアンユーは開発独裁という手法で、一寒村を世界のエリート国に生まれ変わらせたが、そこにも問題が潜むことは否めない。しかし、それでもなお、日本の30年に渡る経済と教育の低迷を救うのは、シンガポール方式ではないかと筆者は思う。
 

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